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    交通事故被害を最小限におさえるための「交渉」基礎知識

    平成26年中に起きた交通事故は約57万件。交通事故は減少傾向にあるとはいっても、決して他人ごとではありません。警察庁の統計では、交通事故によって、約2時間に1人の死亡者、約1時間に80人の負傷者が発生しています。

    交通事故には、注意してもしすぎるということはありませんが、どんなに注意をしていても巻き込まれることはあるものです。実際に事故に巻き込まれた場合、厄介な問題がひとつ残っています。それが損害賠償の示談交渉です。しっかりと対応してもらわないと困るけれど、どんな点に注意すべきなのか全くわからない…そんな人も多いのではないでしょうか?

    そこで、今回は交通事故の被害に遭ったときに知っておきたい、示談交渉の心得をご紹介します。

    本記事は、2015年10月の情報をもとに執筆されたものです。

    知っておきたい、損害賠償交渉の基礎知識

    損害賠償の示談交渉では、被害者と加害者側の保険会社との間で金額を決める示談が一般的です。人損(怪我などに関する損害)は、治療が終わるまで不確定である一方、物損(車などの物に対する損害)は早く金額が確定するので、物損の示談が先に行われるのが一般的です。物損の賠償金ひとつとっても、法律上の争点は多数にのぼります。金額の正当性が気になったら弁護士に相談することをお勧めします。

    示談までにかかる治療費はどうなるの?

    通常、治療中の治療費は保険会社が払ってくれます。なので、本格的な示談交渉は、治療が終了した後(後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定の結果が出てから)始まることが多いです。ただ、医者から「まだ治療が必要」と言われているのにもかかわらず、保険会社が「治療は打ち切り」と言ってきた場合は、この時点から「今後の治療費も支払ってください」という交渉の必要が生じます。

    これ以上治療を続けても症状が良くも悪くもならない状態を「症状固定」といいます。基本的に、治療費や休業損害、通院期間に応じた慰謝料は、医師が「症状固定」と判断したときまでが基準になります。症状固定までの期間を前提に、各損害につきいくらが適正かを判断して賠償金が払われることになりますので、一方的な打ち切りに簡単に応じてはいけません

    経済的に余裕のないときは内払交渉

    示談交渉は基本的には治療が終わった後に始まります。なので、会社を休んで給与がもらえない場合や、通院交通費がかさむなどの場合は、日々の生活が圧迫され、最終的な示談を待っていては、貯金が底をつくということもありえます。

    このように、被害者に経済的な余裕がない場合、正式な示談に先立って示談金の一部を支払ってもらえるよう求めることが必要となります。これを「内払」と言います。内払は、治療費に関しては自然に行われることが多いですが、休業損害などについては、こちらから交渉せねばならないケースが多いです。

    内払は、後に受け取るべき損害賠償の先払いとなりますので、最終的には、示談上の賠償合計額から受け取った分が差し引かれることになります

    示談交渉は症状固定されてから

    実際に症状固定となり、後遺障害の内容も定まったという場合は、加害者側の任意保険会社から「今回の示談金の金額と内訳は~~です。」という申し入れがなされます。

    この保険会社の提案に対し、多くの方が、そのまま「はい、わかりました」と応じてしまう実情があります。しかし、そのまま示談することはご法度です。ここでしっかり損害賠償の明細を確認することが重要です

    示談案には各損害項目ごとに金額が記載されています。治療費、交通費、仕事を休まざるを得なかった分の休業損害(有給休暇も含まれます。)、慰謝料、後遺障害に基づく逸失利益や後遺障害慰謝料といった損害項目が並んでいます。

    示談の大きな争点「過失相殺」

    初回の提案では、休業損害や慰謝料、後遺症関連の金額などは、本来受け取るべき金額より大幅に低い提案になっていることが多いです。また、被害者側にも過失があるとされた場合、過失割合とこれに応じて減額をする旨の記載がされています。これを過失相殺と言います。

    後続車からの追突事故や横断歩道歩行中の事故などでは、被害者側の過失割合はゼロとなるのが通常です。しかし、被害者側も動いていた事故では、被害者にも一定の過失があるとされ、その割合が争いになることも多いです。過失の割合によって数十万~数百万単位の金額が動くこともあるので、過失割合の交渉もとても大事です。

    3つの損害賠償の基準

    損害賠償には、自賠責保険基準・任意保険基準・裁判所基準があります。法的に本来受け取るべき賠償金額を示したのが裁判所基準です。ただ、実際には、保険会社の定める基準にしたがって提案がなされることがほとんどです。裁判所基準をベースに示談金を受け取る交渉は、弁護士に依頼するのが一般的です。

    自賠責保険基準 最低限の保障を行うことを目的にしているので、支払額は裁判所基準と比べると相当低く設定されていますが、被害者側に過失がある場合は、通常よりも減額が少なく済みます。重い過失がなければ、まず減額はされず、被害者に有利な扱いをされることが多いです
    任意保険基準 任意保険会社ごとに設定されている支払基準です。自賠責保険よりも多く支払われますが、裁判所基準と比べると相当低いことが多いです
    裁判所基準 裁判の積み重ねによって認められてきた各ケースの賠償額を目安として定められた基準です。基本的に、自賠責保険基準・任意保険基準よりも賠償額は高額です

    示談書に疑問があれば絶対に署名しない

    示談書にいったん署名してしまうと、まず覆すことはできません。なので署名をする前に念入りに確認をしましょう。どうしても自分で理解できなかったり不満があったりする場合は、弁護士に話を聞くのが一番です。

    示談書の内容チェックポイントは以下のとおりです。これらの項目に一つでも当てはまった場合は提示された内容を再度検討することをおすすめします。

    • 提示された示談金額の意味や根拠がよくわからない
    • 自分は悪くないのに、過失があるとされてしまった
    • 自営業を営んでいるが、休業中の補償額が低すぎる
    • 主婦だから休業損害はないといわれた
    • 事故で破損したものについて、破損と事故とは因果関係が認められないので賠償の対象ではないといわれた
    • 無職だから、休業損害はないといわれた
    • 傷害慰謝料の計算方法や備考欄に、通院実日数という記載がある
    • 示談提示書面に、「自賠責基準より高い」「任意保険基準による」という記載がある
    • 後遺障害の保険金が合計100万円以下である
    • 後遺障害の損害について、「逸失利益」「慰謝料」といった明細が記載されていない
    • 後遺障害の「逸失利益」の計算が5年以内である

    弁護士の意見を聞いたうえで、示談書の内容が納得できるものであれば、保険会社にその旨を連絡します。保険会社が示談の代行をしている場合には、保険会社が作成した示談書に署名押印をして返送するだけで済みます。

    加害者が任意保険に加入していない場合などは、本人と示談交渉をすることになります。最終示談の際に作成すべき示談書の内容は以下のとおりです。

    • 当事者の特定(被害者と加害者を特定する)
    • 事故の特定(事故が起きた年月日、時刻、車両番号、事故の状況など)
    • 損害内容
    • 示談金額
    • 支払条件(支払日と支払方法)
    • 清算条項
    • 将来の後遺症に関する留保条項(傷害部分のみ先行示談する場合)
    負傷の状況にもよりますが、後遺障害を検討せずに傷害のみで示談する場合、将来後遺症が出る可能性があります。そのような事態が想定される場合は、「後遺症が発症した場合には別途協議する」という特記事項が付すことが重要です。このような条項がない場合には必ずこの条項をつけるように保険会社に要求しましょう。そのままにしてしまうと、将来思わぬ後遺症が出た場合、損害賠償請求をすることが困難となります。

    それでも納得できないときの裁判

    示談交渉によっても納得のいく提案がなされない場合には、最終的には裁判を起こすという手段が残っています。裁判となると時間も労力もかかりますし、その手前でほぼ納得のいく提案をもらえれば裁判までいかないケースが多いです。

    裁判を起こした結果、判決によって終える場合と、裁判上の和解によって終える場合の二通りがあります。通常は、裁判所が、ほぼ判決の内容に沿った和解案を提案してくれることが多いため、和解によって終結することが多いです。

    裁判では、具体的な損害額や事故と損害との因果関係は請求する側が証明することになっています。例えば、会社を辞めざるを得なくなった場合はその旨の「退職証明書」などが必要です。なので、裁判をする場合は、証拠を集めておかなければなりません。

    裁判期間は短くて半年、長くて2年ほどかかります。また、弁護士費用だけでなく印刷代や収入印紙代など、バカにならない程のお金がかかりますし、何よりもこれにかける労力も相当の負担となります。裁判を起こすべきか否かは、弁護士の判断をあおぐのが懸命でしょう。

    賠償金に合意をしたら

    保険会社と示談が成立した後、大きなお金を受け取ると、税金のことが気になるかもしれません。まず、以下の項目は基本的に非課税ですので、税金を支払う必要はありません

    • 損害賠償金
    • 治療費、慰謝料、休業損害
    • 物損に対する損害賠償

    労災保険を利用できるのに健康保険を使っていた場合

    労災保険が適用されるのに健康保険で受診していた場合は、労災保険に切り替えて今まで支払った窓口負担分を変換してもらうことができます。

    まず、診療報酬のうち健康保険で処理された自己負担以外の7割分を医療機関に返還します。そして、領収書と診療報酬明細書をもらいます。その後、自分が支払った3割分と返還した7割分の領収書と診療報酬明細書を添付して、所轄の労働基準監督署に全額請求します。

    生命保険は損害賠償と関係なく受け取れる

    被害者が生命保険をかけていた場合は、損害賠償に関わりなく受け取ることができます。遺族厚生年金などの社会保険給付額は、「補填の趣旨が被る」ということで、損害賠償額から控除されるものが多いです。一方、労災保険の特別支給金などは、裁判上は控除されない扱いとなっています。このように、「賠償額から差し引かれるもの」と「そうでないもの」の判断も極めて難しい判断となっていますので、慎重に検討する必要があります。

    事故後の対応は落ち着いて

    事故をして怪我をした場合は、日々の生活の仕方も変わってきますし、それだけでも大変です。保険会社に提出する資料が膨大であったり、自身で調べて金額の交渉をするのは、厄介で面倒くさいので、「もういいや」という気持ちになりがちです。

    最終示談の段階では、今後の経済面に対する不安から早く示談して賠償金を受け取りたいと思う気持ちもあるかもしれません。しかし、事故後の対応をいい加減にしてしまったり、焦って示談をしてしまっては、本来得られるはずのお金をもらえないことになってしまうことがあります。

    交通事故は、大変なものだからこそ、慎重に落ち着いて対応すべきです。事故に遭われた際、示談の際は、弁護士の意見を聞いて、正当な金額を受け取れるようにしましょう。自身や家族の保険に弁護士費用特約がついている場合は、弁護士費用の心配もなく、厄介な交渉も全て弁護士に任せることができますので、活用してくださいね。

    監修:弁護士法人アディーレ法律事務所・弁護士 篠田恵里香先生

    東京弁護士会所属。東京を拠点に活動。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。多数のメディア番組に出演中。

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    (ライター:渡辺悠太)

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