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元引きこもり経営者・家入一真が思う「現代の居場所学」とは

いなければいけない「居場所」はいくつかありますが、「これが自分の居場所なんだ」と納得し、安心していられる居場所はありますか?学校の友達は話が合わない。職場で上司としっくりいかない。家庭で自分の意見を聞いてもらえない。どこにいても心に窮屈さを抱えてしまう人は、現代では多いのかもしれません。そこで今回は連続起業家の家入一真さんに「居場所の作り方」を聞いてきました。高校生の頃、引きこもりだった経験もある家入さん。その頃ネットに居場所を見出したという彼は、現在どんな活動をしているのでしょうか。

突然ですが、あなたは「自分の居場所」と呼べる場所をいくつ持っていますか?

とかく人とのつながりの大切さが叫ばれる現代。インターネットで検索するだけで、「居場所がほしい」「なんだか生きづらい」と、自分の居場所を見つけられずに悩むたくさんの声が目に飛び込んできます。

そんな今の時代に、自分なりの居場所を作って人とつながっていくためにはどうすればよいのでしょうか。今回は、連続起業家として様々な活動を行っている家入一真さんに、居場所の作り方についてお話を伺ってみました。

連続起業や都知事選出馬など常に人々の視線を集める家入さんですが、それらの活動の根幹にはすべて「居場所」というキーワードがあります。そんな彼の考える「現代の居場所学」とは?

本記事は、2015年9月の取材情報をもとに執筆されたものです。

「居場所」とはなにか

家入さんの思う「居場所」

家入さんの思う「居場所」とは、いったいどういう場所なのでしょうか。

家入さん「ひとことでいうと、おかえりって言ってもらえる場所。そこを起点にして旅に出ることも挑戦することもできる、だけど『ミスをしたらいつでも帰っておいで』と迎えてくれる場所なのではないでしょうか」

かつては人とのコミュニケーションに疲れ、引きこもりになってしまっていた家入さん。しかし意外なことに、自分で初めて「居場所」を作ったのは、その時期なんだとか。

家入さん「僕が初めて作った自分の居場所はネットの中でした。高校一年生のときに初めてPCを買ってもらって、一日中知らない人とパソコン通信していたんです。そのときに初めて、『あぁ、自分はここにいてもいいんだな』と思えたんです」

人とコミュニケーションがうまくとれなくても、ネットの中なら居場所を作ることができる、同志を探すことができる。その原体験があったからこそ、都知事選のネット選挙をはじめとして、家入さんの活動のコアにはいつもネットがあるのですね。

「居場所」がない=逃げ場所がない!?

そんなインターネットで「居場所」と打ち込むだけで、画面には「居場所がない」と悩むたくさんの人の声が並びます。なぜ、現代人はこんなにも「居場所がない」と生き辛さを感じているのでしょうか。

家入さん「経済成長が進むなかで、自分のプライベートを重視するという価値観が生まれて、横とのつながりがなくなってしまったのが原因の一つなのではないでしょうか」

昔は地元の集まりなど、家や学校以外にも「自分が自分でいられる場所」が当たり前のように存在していたもの。銭湯のように、上下関係のない「横とのつながり」によって、自然と居場所になる場があったのです。

そういった場が少なくなってしまった今、限られた居場所にしがみつこうとするあまり自分のカラダやココロを壊してしまう人が増えているんだとか。

家入さん「他に選択肢がないから、そこにとどまって自分を追い詰めちゃうんです。ちょっとした逃げ場所があれば、もっと生きやすくなると思うんですけどね」

人とのつながりを作っていく3つのコツ

居場所を作るということ、それはすなわち人とつながるということです。人とのつながりを上手く広げていくためにはどうしたらよいのでしょうか。

1.「give&give」という考え方

家入さんがなにか新しいことを始めようとするとき、彼の周りにはたくさんの人が集まってきます。家入さんの周りに人が集まってくる理由は一体どこにあるのでしょうか。

家入さん「僕、give&giveって考え方が好きなんですよね。日本語だと、恩返しならぬ『恩送り』。もし僕の周りに人が集まってきてくれているんだとしたら、それが巡り巡ってきているのかもしれません」

見返りを求めずに周りの人のために活動をする、という考え方を、「give&give」といいます。そうすると、いつか思いもかけない場所から自分に戻ってくる。恩を返すのではなくてどんどん次に送っていくというこの連鎖が、家入さんはすごく大好きなのだとか。

家入さん「give&takeだと、その一対一の関係で終わってしまうけど、give&giveの考えで恩をどんどんつなげていけば、結果的に円のように広がっていく。もし僕を助けてくれる人がいたとしたら、きっとそれは全然別のところで僕がしたことの結果なんだと思います」

ちなみに、実はこのgive&giveという考え方、アメリカを中心とした欧米諸国ではずいぶん浸透しているそう。自分の食事代ではなく次に来た人のための代金を払うレストラン「カルマキッチン」・砂漠の真ん中で行われるアートフェスティバル「Burning Man」など様々な形となって、上手く回り始めているようです。

2.常に一方的に人を信頼すること

家入さん「常に一方的に信頼することでしか人との関係は始まらないと思う。それは心がけています。もしそれで相手に裏切られたとしても、恨むことはしません。一方的に信じるということは、つまり裏切られるリスクも背負うということだと思います」

それは、言い方を変えれば、相手に何も求めないということでしょうか。

家入さん「あー、確かに求めていないですね。恋愛でも仕事でも、相手に何か見返りを求めちゃうと辛くなると思うんです。自分はこれだけしてあげたのに…って、損した気分になるというか。でも、もともと一方的に自分がやったことだと考えていたら、損はしていないんですよね」

家入さんの周りに集まってくる若い子の中には心が弱い子も多く、途中で音信不通になってしまうこともあったといいます。そんなときでも、家入さんは「裏切られた」とは思わないそう。なぜなら、一方的に信頼して任せたのは自分だから。

3.人と人とは分かり合えないと心得る

家入さん「僕は、人と人っていうのは絶対に分かり合えないと思っています。分かり合えない中で、お互いにどういう態度を示すかが大切なのではないでしょうか」

例えば、転んで大怪我をしていた友達がいても絶対にその人の気持ちにはなれません。なぜなら、自分は転んでいないしケガもしていないから。ただ、そこで「この人を助けてあげたい」と手を差し伸べる行為や気持ちに意味がある、と言う家入さん。

家入さん「『見返りを求めない』にもつながると思うんですが、人を思っての行為って、ある意味では一方的で自分勝手な行為なんです。でも、その行為とか気持ちに嘘はないですよね」

たとえ親子であろうと恋人同士であろうと、他人同士は分かり合えないもの。しかし、相手のことを慮って自分自身で選択した行為なら、たとえ見返りがなくとも、自分の中で意味を持つということなんですね。

自分の居場所の作り方

それでは、自分が安心できる居場所はどのように作ればいいのでしょうか?その方法は3つあるそうです。

1.人の居場所作りを手伝ってみる

家入さん「いきなり何もないところから自分の居場所を作るのはやっぱり難しいですよね。じゃあどうすればいいのかというと、既に同じような行動をしようとしている誰かの居場所作りを手伝えばいいんです」

これも、give&giveの考え方と一緒です。誰かのために動いていると、いざ自分がなにかをしようとしたときに誰かが手伝ってくれるという流れが生まれてくるのだとか。

家入さん「誰かの居場所づくりを手伝っていたら、いつの間にかそこが自分の居場所になっていた、ということもあります。それはそれでハッピーですよね」

2.身近な誰かのために何かをしてみる

「顔が思い浮かぶ身近な誰かのために手紙を書くような感じで始めてみたらいいよ」

なにか新しいことを始めたいと相談をしてくる人に対して、家入さんがまずアドバイスするのはただこれだけなんだそうです。

家入さん「とにかく身近な人が喜ぶことをし続けていると、何かしら生まれてくるんです。身近な人が喜んでくれるなら、たとえそれが広がらなくても『あの人が喜んでくれたからいいか』とポジティブに考えることができます」

いきなり大それたことを考えるのではなくて、身近な誰かが喜ぶことをやる。そう考えたら、自分にできることは意外とたくさんあるのかもしれないですね。

3.自分の居場所を人の居場所に

現代の駆け込み寺という名のシェアハウス「リバ邸」をはじめとして様々な人達の居場所を作り続けている家入さんですが、その居場所づくりは結局すべて自分のためなんだといいます。

家入さん「僕が人の居場所を作り続けるのは、僕自身の居場所がたくさんほしい、ただその理由からなんです。自分の居場所が結果的に人の居場所になっただけなんですよね」

自分の居場所を作って、今度はそれを人に提供していく。これもまたgive&giveの考え方につながっていくのですね。

これからの「居場所」の在り方

生き方や働き方が多様化していくこれからの時代、私たちの「居場所」はどのように変化していくのでしょうか。

「寄り添う」という生き方

これからは企業に就職して安定して働くという雇用形態はどんどんと崩れ、「一億総フリーランス時代」になっていく。その中で今まで以上に孤独を感じる人達は増えていくであろうと家入さんは言います。

家入さん「孤独感もそうですし、収入の問題も含めて一人で生きていけないってい人たちも生まれてくる。その中では、極論寄り添って生きていくしかないと思うんです。1人1人は弱くても、つながっていくことで強みを生み出せるはずです」

今ではだいぶ定番化してきたシェアハウス、コワーキングのような「シェアリングエコノミー」という考え方も、「寄り添い」の一つの形ですね。

家入さん「『シェア』を日本語風にいうと、『寄り添う』になるんだと思います。寄り添いながら生きていくという考え方は、これからの人類の生存戦略になっていくのではないでしょうか」

繋がらない人たちの居場所とは

自分の居場所を必死で求める人たちがいる一方、最近では「つながらない生き方」や「ぼっち」など、孤独に生きることを肯定する考えも増えてきました。

家入さん「本当に一生誰ともつながらないで1人がいいなら仕方ないと思うんですが、多分『ぼっちがいい』という人たちにも、波があると思います。1人でいたいときもあれば、人と共有したいなって思うときもある。その波とどうやって付き合っていくのかが大切ですよね」

「自分は一生一人でいるんだ」という頑なな姿勢ではなくて、一人でいられる場所、誰かといられる場所など、居場所の選択肢を複数用意しておくということでしょうか。

家入さん「そうですね。インターネットも一つの居場所になり得ると思います。人に会わずして、何かを人と共有することができますからね。リアルなつながりだけが素晴らしいわけではないです」

リアルやネット、いろんな形の居場所を作っておいて、そのときの自分の気分に合わせて上手く使い分けていくのがポイントなんですね。

理想はいろんな居場所の形があること

都知事選の際には、「居場所がある街、東京」を政策の一つとして掲げていた家入さん。地方や都心部も含めて、もっといろいろな種類の居場所を増やすことで、世の中はもっと生きやすくなるのではないかと言います。

家入さん「世の中には、生き辛い思いをしている人たちがたくさんいる。そういった人たちが『これでいいんだ』と思える場所がたくさんあったら最高だと思うんです。歌舞伎町を浄化しようという動きもありますけど、歌舞伎町は今、いろんな人が集まれる場所にもなっているので、ただ綺麗にすればいいという話ではないですよね」

「綺麗」にした結果、居場所を失ってしまう人たちが出てくる。単純に規制して整備するだけではなく、多様な人たちを受け入れる場所を作ることが必要なんですね。

家入さん「それを政治で設計できればいいんですけど、難しいのも事実。だったらまずは、民間や個人で始めるべきなのかなと思います」

はじめは自分のためのものだった居場所づくりが、結果的に色々な人の居場所につながっていく。give&giveの気持ちで、気楽に自分の居場所づくりや他人の居場所づくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか?

今回お話を伺ったのはこちら!

家入一真さん

1978年生。福岡県出身。株式会社ximera代表取締役。

2003年ペパボことpaperboy&co.を創業(現:GMOペパボ株式会社)。ペパボ退任後は連続企業家として「CAMPFIRE」「BASE」などのウェブサービスを立ち上げ、取締役に就任。2014年には東京都知事選挙へ出馬。また、悩める若者の立場に立ち、現代の駆け込み寺「リバ邸」や「深夜のお悩み相談」などを精力的に展開している。 著書に『我が逃走(平凡社刊)』など。

(image by nanapi編集部)
(ライター:野口飛鳥)

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