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    「ブス」って書いたら名誉毀損!弁護士が教える、ネットの書き込みトラブル

    インターネットが発達して便利になった裏側で、増えているのが、ブログや掲示板などへの悪質な書き込みトラブル。軽い気持ちでネットに投稿した悪口が、「名誉毀損罪」や「侮辱罪」などにあたり、刑事事件に発展してしまう可能性もあります。では、ネットに書き込みをする時には、一体どのような点に注意すればいいのでしょうか?個人に対してだけでなく、お店や企業に対する営業妨害で訴えられてしまうボーダーラインとは?アディーレ法律事務所の弁護士・篠田恵里香先生に教えていただきました!

    思ったことはいつでも簡単にインターネットに書き込める現代。コミュニケーションが気軽にとれたり、自由な表現の場となったりと、ネットはとても便利ですが、その陰でネット上でのトラブルも絶えません。

    ここ最近では、ネットへの何気ない書き込みが爆発的に拡散されて、大問題になってしまうケースも増えています。そのようなネットトラブルを避けるためには、いったいどのようなことに気をつければいいのでしょうか?

    そこで今回は、弁護士法人アディーレ法律事務所の弁護士・篠田恵里香先生(以下、篠田先生)に「ネットへの誹謗中傷などの書き込みはどこから訴えられるのか?」というテーマでお話を聞いてきました!

    本記事は、2015年9月の取材情報をもとに執筆されたものです。

    ネットの普及でトラブルの形にも変化が

    そもそも、個人に対する誹謗中傷などで「名誉毀損」や「プライバシー侵害」などといった権利侵害が認められるパターンとしては、昔は雑誌・新聞・ラジオ・テレビなどのマスメディアによるものが中心でした。ですが、インターネットの急速な普及によって、ここ数年のあいだで「個人が個人を侵害する」というトラブルが急増しているのだそうです。

    ネットの普及によって、権利侵害の形が「マスメディア→個人」から「個人→個人」に!

    ネットでの書き込みが訴えられるふたつのポイント

    それでは、いったいどのような書き込みをしたら訴えられてしまう可能性があるのでしょうか?

    ネットの書き込みを訴えるためには、ポイントがふたつあります。まずは、「内容」。本人を特定できる状況で個人情報を書いてしまったり、誰が見てもやりすぎだと思うような誹謗中傷をした場合には、罪に問われたり、賠償請求される可能性があります。

    もうひとつ重要なのは、「情報が拡散された(拡散されうる)範囲」です。ネットに書いた情報がどこまで広まったのか、もしくは広まる可能性があるかという点も、実際の裁判などではとても重視されています。

    アクセス数の少ない個人ブログや、少数の友人に限定公開しているSNSなどでは、情報の拡散度合いが低いので訴えられて問題になる可能性は低くなります。ですが、誰でも見ることができるサイトやSNSへの書き込みは多くの人目にふれるため、訴えられて賠償請求となる可能性が高くなります。

    とはいえ、過去にはアクセス数が1日10件にも満たないWEBサイトへの書き込みで訴訟が起きた例もあるため、「どうせ見ている人は少ないだろう」と思って中傷や個人情報を書き込むのは危険です。

    ネットの書き込みではどんな罪が問われるの?

    ネットでの書き込みが罪に問われたり、賠償責任が生じる場合は、大きく4種類にわけることができます。

    • 1:名誉毀損罪
    • 2:侮辱罪
    • 3:プライバシーの侵害
    • 4:肖像権・著作権の侵害

    芸能人などの場合は「パブリシティ権の侵害」も取り上げられますが、一般人であればおもに上記4つが問題となります。

    1:名誉毀損罪

    ネットの書き込みトラブルといわれて、まず一番に思い浮かぶのが「名誉毀損」です。名誉毀損とは、法律上では「事実を示してその人の社会的評価を下げること」とされています。

    多くの人は、「ネットにありもしない嘘の誹謗中傷を書くこと」が名誉毀損にあたると考えているかと思います。しかし法律では、「真実の有無に関わらず罪を問われる」とされています。つまり、仮に本当のことを書いたとしても、それがその人にとって知られたくない内容や、社会的評価を落とすような内容であれば、名誉毀損になってしまうのです。

    たとえば、

    「◯◯さんちの奥さん、××中学校の先生と浮気しているんだって」

    という内容を書き込みした場合、仮にそれが真実であっても名誉毀損に問われることがあります。

    ウソを書いても真実を書いても、名誉毀損になる可能性がある!
    ただし、名誉毀損には特例があります。ペヤングやマクドナルドの異物混入事件など、不祥事が社会の利害にまつわる場合は、仮にその事実をネットなどに書き込んだとしても名誉毀損は成立しません。

    2:侮辱罪

    誰かに関する「事実」を広めてしまうことが名誉毀損ですが、その人にまつわる「評価」について誹謗中傷した場合は「侮辱罪」となります。

    たとえば、「デブ」「ブス」「バカ」「チビ」など、からかい半分でつい口にしてしまいそうな言葉でも、ネットに名指しで書き込むと侮辱罪となってしまう可能性があります。

    篠田先生「日本の法律では、中傷をされた本人が個人的に『イヤだ』と思ったことに対する保護はないのですが、中傷が社会的評価に影響する場合には保護されます。なので、『デブ』『ブス』といった中傷を本人に口頭で言うぶんには犯罪にはならないのですが、ほかの人に知られるような形でネットに書き込むと違法になってしまいます」
    口頭で直接言えば罪にならない内容でも、ネットに書き込むと罪になってしまう可能性が!

    3:プライバシーの侵害

    簡単にいうと、プライバシーとは「私生活にまつわる事実」ということになります。知られたくないプライバシーが周囲に広められてしまった場合、プライバシーの侵害にあたります。

    ですが、個人に対するささいな情報をネットに書き込んだらすべてプライバシー侵害になるかというと、それはなかなかむずかしいところです。誰が見てもひどいと思うような内容でないと、一般的にはプライバシーの侵害とは判断されません。

    しかし注意しておきたいのは、雑誌などの書籍にのっていた個人情報(住所・氏名・電話番号や顔写真など)をネットに転載した場合はプライバシーの侵害にあたる可能性がある、ということ。

    過去には、電話帳にのっている個人情報をネットに書かれたことで訴訟を起こし、20万円の慰謝料が認められたというケースもあります。

    すでにどこかで公開されている情報でも、ネットに転載するなどして公開範囲を広げてしまうと違法になる恐れがある!

    4:肖像権・著作権の侵害

    ネットに誰かの顔写真を無許可にアップしたり、本人が嫌だという写真をアップしたりすると肖像権の侵害となる可能性があります。

    また、ネット上で見つけたイラストや写真などが気に入ったからといって、それを自分のWEBサイトやブログなどに勝手に使用した場合は、著作権侵害にあたる可能性があります。

    篠田先生「写真は、特許庁に登録しなくても、誰かがそれを撮影した時点で基本的には著作権が発生します。なので、それを勝手に使用してしまうとこれは著作権侵害になってしまうのですが、これは多くの人がSNSなどでやってしまっていますよね」

    その他:名前を伏せて書いても場合によってはNG!

    名指しでの書き込みが上記のような罪に問われる可能性があるだけでなく、仮に相手の名前を伏せて誹謗中傷などをした場合も、第三者から見て明らかに誰について書かれているのかが明確な場合には、侵害行為として認められることもあります。

    逆に、ネットの書き込みで罪にならないケース

    1:お互いに言い合っている「ケンカ」の場合

    こちらは少々意外ですが、ネット上で両者が罵倒しあっているようなケンカの場合は、名誉毀損や侮辱罪などの賠償責任が認められないケースが多いそうです。

    一方的に中傷の書き込みをするなど、相手が反抗できないような状態の場合は名誉毀損や侮辱罪にあたることが多いですが、ケンカの場合はお互いに言いたいことを言い合っているので、反論の機会も与えられています。そのため、どちらかの社会的評価が極端に落ちるということもあまりなく、罪を問われにくいのだそうです。

    篠田先生「『対抗言論の法理』なんていわれていますが、反論しあっている状況であれば基本的にはお互いさまです。それを見ている第三者は『勝手にやってれば』という気持ちにもなるため、賠償責任が認められないケースが多いといえるでしょう」

    2:飲食店に対するネガティブなレビュー

    食べログなど、飲食店のレビューサイトにお店にとってマイナスになる感想を書き込む場合は、基本的には名誉毀損や業務妨害にはなりません。もちろん書き方や程度にもよりますが、「おいしくなかった」「店内が汚かった」くらいであれば問題ないでしょう。

    しかし、ウソの内容を書いて店の売上を落とすなどの業務妨害をした場合には、訴えられて高額な損害賠償を請求されてしまうこともあります。

    実際に訴えられたらどうなるの?

    アディーレ法律事務所に、このようなネットの書き込みトラブルで相談に来る方もまれにはいるそうですが、そこから裁判まで起こそうと考えているような人はあまりいないのだそうです。

    篠田先生「ただでさえ誹謗中傷などで自分が嫌な思いをしているのに、裁判で長い間戦ってしまうと、そこでもまたさらに嫌な思いをすることになりますからね」

    しかし相談に来る方の多くは、裁判は起こさずとも、相手を特定するために「発信者情報開示」を求めるようです。

    「発信者情報開示」:プロバイダーを通じて、書き込み元の情報を特定すること。

    ネットは匿名で書き込みができるため、ついつい侵害にあたるような書き込みをしてしまいがちです。ですが、実際に侵害行為となった場合にはこのようにして自分の情報を開示されてしまうので、あくまでも実名で書き込んでいるという意識を持つようにしましょう。

    なぜネットが「違法の無法地帯」となっているのか?

    このように、ちょっとした気のゆるみで違法となるような書き込みをしてしまう恐れは十分にありえますし、現にネットのあちこちに侵害行為が見受けられます。それなのに、たいして取り締まられている様子もなく、実際に法律事務所に相談に訪れる人も多くないのはなぜなのでしょうか?

    篠田先生「たとえば他人のポケットから1円玉を盗んだら窃盗罪になりますが、明らかに犯罪なのに、それで捜査機関が動くかというと現実的ではありませんよね。それと一緒で、ネットでのトラブルもよほど悪質なケースでない限りは取り締まりしきれないというのが実情です」

    たしかに、もう誰しもが違法行為をやりすぎているため、取り締まろうとしても困難な状況になっています。そのため、侵害の度合いがよほど悪質であったり、世間をにぎわすような行為でない限りは捜査機関も動くことができず、検挙まで至らないのだそうです。

    篠田先生「法律家としての立場からあえて誤解を恐れずいうと、ネットは違法の無法地帯となっています。書き込みによる侵害行為のみならず、ネットオークショントラブルやLINEでの出会い系トラブルなど、急速に普及したネットを介したトラブルのすべてに対応が追いつかず、取り締まりしきれていない状況が続いています」

    訴えられた場合の慰謝料は?

    また、仮に書き込みによる権利侵害などで裁判を起こしたとしても、慰謝料が認められるかという点も相当むずかしい問題のようです。

    たとえば、企業が顧客の個人情報(住所・氏名・電話番号・メールアドレスなど)を流出させてしまった場合は「プライバシーの侵害」にあたりますが、実際に支払われる慰謝料は1件あたり5,000円程度だったりするのだとか。

    一見するととても少ないようでびっくりしますが、これは裁判所の企業へ対する配慮だとも考えられます。仮に1件5,000円だったとしても、それが何百万件もあれば何十億円にもなり、企業にとっては大きな痛手となるためです。

    篠田先生「基本的なプライバシー侵害や名誉毀損に関する慰謝料というのは、一般の方が思っているよりも相当低くなっています。とはいえ、一般個人への侵害行為ではなく芸能人や企業への侵害の場合は慰謝料が高額になるケースが多いので、特に注意してください」

    芸能人や企業に対する業務妨害は、売上の損失分も請求されるために慰謝料が高額になりがちです。ですが、カルト集団がラーメンチェーン店「花月」に対する名誉毀損行為で有罪になった事件の民事の損害賠償は77万円。企業相手でも、想像よりはるかに少ない額なんですね…。

    仮にネットの書き込みで訴えられたとしても、十分な慰謝料が見込めない可能性が大きい!

    取り締まりがゆるくても、ネットの書き込みには注意!

    このように、ネット上での誹謗中傷や個人情報にまつわる書き込みについてお話を聞いてみたところ、「ネットの書き込みはちょっとしたことで違法になりうるが、それで訴えられたり慰謝料を請求できるかといわれると、かなりむずかしい」という、なんだかモヤモヤとした結論となってしまいました。

    しかし、みんなやっているし取り締まられにくいからと高をくくっていては、いつ足をすくわれるかわかりません。認められる慰謝料は低額でも、違法行為を訴えられて被告となることは、相当な負担になることは否定できません。仮に悪質な書き込み行為が法的に問題視されなかったとしても、そこから自分の個人情報が特定されて拡散され、一生ネット上に残ってしまうというような予想外の事態もありえるため、ネットへの書き込みにはくれぐれも注意してくださいね!

    取材協力

    アディーレ法律事務所・篠田恵里香先生:東京弁護士会所属。債務整理をはじめ、男女トラブル、交通事故問題などを得意分野として多く扱う。離婚等に関する豊富な知識を持つことを証明する夫婦カウンセラー(JADP認定)の資格も保有している。多数のメディア番組に出演中。

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