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漢文読解『長恨歌』 白居易 作のポイント!

「長恨歌」は白楽天の代表的詩の一つで、史実を歌にした勇敢な歌といわれています。なかなか、現王朝の間にはできないことだったのですね。例えば正史については次の王朝の者が前王朝の物を書くのが中国式でした。それでは、さっそく唐の恋愛詩の舞台をみていきましょう。

この漢文の形式

七言古詩

「長恨歌」

漢 皇 重 色 思 傾 国
御 宇 多 年 求  得
楊 家 有 女 初 長 成
一 朝 選 在 君 王 側
迴 眸 一 笑 百 媚 生
六 宮 粉 黛 無 顔 色
春 寒 賜 浴 華 清 池
温 泉 水 滑 洗 凝 脂
後 宮 佳 麗 三 千 人
三 千 寵 愛 在 一 身
春 宵 苦 短 日 高 起
九 重 城 闕 煙 塵 生
西 出 都 門 百 余 里
六 軍  発  奈 何
宛 転 蛾 眉 馬 前 死
聖 主 朝 朝 暮 暮 情
 望 都 門 信 馬 帰
翡 翠 衾 寒 誰 与 共
魂 魄  曾 来 入 夢
七 月 七 日 長 生 殿
夜 半  人 私 語 時
 天 願 作 比 翼 鳥
 地 願 為 連 理 枝
天 長 地 久 有 時 尽
此 恨 綿 綿 無 絶 期

漢皇色を重んじて傾国を思ふ

御宇多年求むれども得

楊家に女有り初めて長成す

一朝選ばれて君主の側に在り

眸を廻らして一笑すれば百媚生ず

六宮粉黛顔色無し

春寒くして浴を賜ふ華清

温泉水滑らかにして凝脂を洗ふ

春宵短きに苦しみ高くして起く

後宮の佳麗三千人

三千の寵愛一身に在り

九重の城闕煙塵生じ

西のかた都門を出づること百余里

六軍発せず奈何ともする

宛転たる蛾媚馬前に死す

聖主朝朝暮暮の情

のかた都門を望み馬に信せて帰る

翡翠の衾寒くして誰と共にせん

魂魄曾て来たりて夢に入ら

七月七日長生殿

夜半人無く私語の時

天にりては願はくは比翼の鳥と作り

地にりては願はくは連理の枝と為らんと

天長地久時有りて尽くるも

此の恨みは綿綿として絶ゆる期無からん

現代語訳

玄宗皇帝は美人を好きで、いつか傾国の美女を得たいと思っておられたが、御治世中、長い間探し求めてもそのような人を得る事は出来なかった。楊家に、やっと一人前に成長したばかりの年頃の娘が居た。ある朝すぐさま見出だされて、天子の側仕えをすることと為った。ひとみをめぐらせてちょっと笑うとすさまじい媚があらわれた。

化粧をしまくった後宮の麗人たちも立場を喪ったくらいの寵愛だった。初めてのご寵愛は、春であって、まだ寒く、楊家の女が華清宮の温水に浸かる事を許されたのがはじまりだったことだ。なめらかな温水を、脂ののり切った皓い躰がはじいたくらい、魅力的だった。春の夜の短く明けるのが速いのを恨み、日が中天に上がってからお起きになる。

後宮の麗人は三千人いたといわれるくらい大勢妃候補がいた。その三千人への愛は楊家の女唯1人のものだったのだ。九重にも護られた宮殿に、安禄山の仕掛けた戦の塵が立ち上がった。都の城門を、西へと百里余りすすんだ。
官軍はこれ以上すすもうとはしないのでしかたなく、玄宗皇帝は、楊貴妃を殺した。

玄宗皇帝は朝も夕も貴妃を恋い慕って嘆いた。東に都の門を望んで、馬にまかせつつ帰途につく。かわせみの夜具は冷え切っていていっしょにやすむ人もいない。楊貴妃の魂魄が玄宗皇帝に会いに夢に現れることもなかった。

七月七日の長生殿。誰もいない真夜中に親しくお話ししたとき…天にあっては願わくは比翼の鳥となり、地にあっては願わくは連理の枝となりましょう。天地悠久といえどもいつかは尽きる時が来る。でもこの悲しみは綿々と続いて尽きる時はこないだろう。

重要な句法

  • 不~:~ない
  • 在~:~に在る
  • 無~:~出来ない

読解のポイント

叙情的詩なので、句法よりも“宛転”等の形容動詞的な熟語が目立ちます。

中国的な言葉に慣れましょう! 注釈をチェックしましょう!
  • 漢皇:漢人の皇帝。ここでは玄宗ただ一人をさす言葉
  • 傾国:傾城傾国といって、国主が政を忘れ、国を滅ぼすに至る妖しい美女。
  • 楊家:楊家の養女、玉環、が主人公のひとり、貴妃称号をもつにいたる女
  • 粉黛:白粉とまゆずみ、化粧のこと。ひいては美人を指す言葉
  • 華清池:温泉で名高い離宮の地。今は見るかげも無い跡地となって久しい
  • 凝脂:白い脂、楊貴妃のこと。
  • 西~東:戦のため都長安を離れ、西へ逃げ、東へ向けて帰ったのをさす対句

おわりに

有名な七言の詩です。登場人物を漢時代の武帝という王様と李夫人に仕立てて当時の帝に遠慮しつつ、匿名の形でかなりの史実を含んだ歌として謳われたものですから、その辺が中々興味深い歌です。

(photo by amanaimages)

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