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和歌の技法「枕詞」の意味と使い方

「和歌」とは百人一首に代表される、日本の伝統的な定型詩のことです。五音と七音を組み合わせて作られています。

「五・七・五・七・七」という決まった数の音(おん)で作るという決まりを持った「短歌」がもっともポピュラーな形ではないでしょうか。

ここでは「和歌」で使われている技法のひとつ「枕詞(まくらことば)」について説明します。

「枕詞=まくらことば」とは?

百人一首に入っている、紀友則の和歌を読んでみましょう。読みやすいように、歌を区切ってあります。

ひさかたの/光のどけき/春の日に/しづ心なく/花の散るらむ

この歌の意味を、同じように区切って表すと、次の通りです。

・・・・・/光ののどかな/春の日に/しずかな心を持たず/花は散るのだろう

つまり、こんなに春の光がのどかなのに、どうして花は、いそがしく散っていくのだろうという意味です。

和歌は「ひさかたの」で始まっていますが、現代訳では、それに相当する個所は、「・・・・・」になっています。

なぜならば「ひさかたの」という言葉は、言葉としての意味を持っていないので、とくに訳す必要がないからです。これが「枕詞」です。

枕詞の特徴

1: 枕詞は意味を持っていない(訳さなくてよい)

上記の説明にあるように、枕詞そのものには、意味がありません。枕詞によっては、全くないというわけではないのですが、長い歳月の中で、言葉の意味そのものは抜け落ちていったようです。

現代訳にするときも、「これは枕詞である」と認識するだけで、その言葉は訳しません。

2: 特定の言葉につながっている

それぞれの枕詞は、それぞれの特定の言葉の前に置かれます。上記の和歌では、「ひさかたの」は「光」という言葉におかれる枕詞です。

「ひさかたの」という枕詞は、「光」以外に「天」「雲」「月」などの前に置かれます。

そのほかの「枕詞」

百人一首にも、枕詞が使われている歌がありますので、挙げておきます。左側の語が枕詞で、右側に、その枕詞に対応している特定の言葉を書きました。

  • あしびきの → 山
あしびきの山鳥の尾のしだり尾の長ながし夜をひとりかも寝む/柿本人麻呂
  • ちはやぶる → 神
ちはやぶる神代も聞かず竜田川からくれなゐに水くくるとは/在原業平

なぜ、意味を持たない「枕詞」が使われるのか?

1: リズムを整えるため

枕詞はたいていが「5音」です。この5音を入れることで、歌の調子が整うのです。

意味を持っていなくても、昔は言霊としての意味合いがあり呪力を持つ言葉だったのではないかという説もあるそうです。

2: イメージを引き出すため

意味は持たないと書きましたが、枕詞によりイメージが呼び起されるので、和歌の雰囲気を理解するのに役立っています。

例えば、「夜、闇、黒」などにかかる「ぬばたまの」という枕詞を聞くと、「夜、闇、黒」などという言葉を聞く前に、和歌を聞く人の中に、真っ黒なイメージが呼び起されるのです。

「枕詞」を使ってみる

まず、どの言葉に、どの枕詞がつくのかを調べます。一番、早いのが、ネット検索で「枕詞」と入れると、枕詞がいくつか出て来ます。その中で、使えそうなものを選んで、使ってみます。

今回は「母」という言葉にかかる枕詞「ははそばの」を使うとします。どこに使ってもいいのですが、一首の最初に持ってくるのが、初めての方には作りやすいかと思います。

ははそばの母と蜜柑を剥きたれば子供のころを思い出したり

この歌は、「ふるさとの母と蜜柑を剥きたれば子供のころを思い出したり」としても、良いのですが、枕詞を使うと味わいがまた変わるようです。

次に、「夜」にかかかる枕詞「ぬばたまの」を使ってみます。

いつもより長い気がして外を見る貴方のいないぬばたまの夜

この歌も、「ぬばたまの夜」ではなく「真っ暗な夜」「しずかなる夜」であっても良いのですが、枕詞を使うと、和歌的な雰囲気が出て、おもしろいかもしれません。

間違った使い方

「特定な言葉」とそれにかかる「枕詞」の、組み合わせを間違えないようにしましょう

  • 正しい例:ぬばたまの夜、あかねさす昼、ははそばの母、ちちのみの父

  • 間違いの例:ぬばたまの「昼」、あかねさす「夜」、ははそばの「父」、ちちのみの「母」

枕詞は、本来意味がないものではありますが、組み合わせを間違えると、雰囲気がちぐはぐで、読む側が戸惑います。

また、枕詞をよく勉強しないで使っていると思われ、歌を詠む姿勢が悪いという指摘を受けかねません。正しく使いましょう。

枕詞を使うときの注意点

現代の短歌では、「枕詞」はあまり頻繁には使われていないようです。また枕詞を使うときも、安易に乱用せず、それが効果的に使われているかどうかをチェックしたいものです。

ですから、和歌・短歌に対する鑑賞目を養うことが大切です。まずは、現代短歌の枕詞の使われ方を鑑賞するところから始めましょう。

おわりに

ここに出てきたもの以外にも、枕詞はたくさんあります。「枕詞」の説明としては、かなり簡単ではありますが、お役に立てばうれしく思います。

(photo by 足成)

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