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和歌の技法「序詞」の意味と使い方

和歌は、たった三十一文字(みそひともじ)という短さなのに、さまざまな技法が使われいるとは興味深いことです。ここでは、和歌の技法のひとつである「序詞(じょし・じょことば)」について説明をします。

「序詞」の使われている和歌の例

説明としての序詞

序詞を説明するのに、一番良く使われる歌の一つが、

あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む (柿本人麻呂)

です。意味は、「長い長い夜を一人ぼっちで寝ることになるのかなあ」です。上の歌と照らし合わせてみると、この訳に相当する部分は、歌の下半分である下の句の「ながながし夜をひとりかも寝む」です。

では、太字になっている、歌の上半分である上の句は、何のためにあるのでしょう。これは、「夜」というものが、どれだけ「長いのか」を説明しています。

山鳥は、尾が長く垂れ下がっているのが特徴の鳥です。つまり、それほど長く思われる「夜」というわけです。この「夜」という言葉を導き出すための部分を「序詞」と呼びます。太字にしてある部分です。

序詞とは、ある言葉を導くために、その言葉の前に置かれる言葉です。

リズムとしての序詞

柿本人麻呂の「あしびきの~」の序詞は、「夜」を説明しているという点で、「意味のある序詞」ですが、意味を持たず、リズムをとるために、用いられる序詞もあります。

浅茅生の 小野の篠原 しのぶれど あまりてなどか 人の恋しき (参議等)

意味は、「今まで隠してきたけれど、もう隠しきれないほど、なぜ、あなたが恋しいのでしょう」です。下の句だけで、歌の意味を持ちます。そして上の句は「序詞」となります。

「浅茅生」は、「あさじう」と読み、「浅茅」という草が生えていることを指します。上の句の意味は、「浅茅の生えている小野の篠原」という場所のことです。

作者は、下の句の「しのぶ(忍ぶ)」という言葉を導き出すために、「篠原」という言葉を使っているのです。

「しのぶ」と「しのはら」に共通する音は「シノ」ですね。同じ音を繰り返すと、音読するときに、リズムが生まれることに気づくでしょう。この「シノ」という音を2回使うことが、序詞の目的なのです。

「序詞」には、「ある言葉の説明をする」役割をするものと、「リズムを整える」役割をするものがあります。

「序詞」を使って歌を詠むときの注意点

似ている用法「枕詞」との違い

「序詞」は、ある言葉を導き出すために使われています。これに似た使われ方をするのが「枕詞」です。

「枕詞」が、「特定の言葉」に掛ってくるのに対して、「序詞」は、特定の言葉ではなく、いろいろと創作がなされています。

上の、柿本人麻呂の歌に出てきた「夜」の、「序詞」は、「あしびきの山鳥の尾のしだり尾の」というものですが、「夜」に掛る「枕詞」は、「ぬばたまの」と決まっています。

nanapiの記事「枕詞の意味と使い方」を参考にしてみてください。

また「枕詞」は5音ですが、「序詞」に文字数の決まりはありません。

先ほどの、柿本人麻呂の「あしびきの~」の歌にも、「枕詞」があります。「あしびきの」が、「山」に掛る枕詞です。この歌は、「序詞」の中に、「枕詞」という技法までも、組み込まれているのです。

「序詞」は、「枕詞」よりも、音数や掛け方などが自由です。

「序詞」は、現代ではあまり使われない技法

「序詞」は、現代の短歌の中では「消えてしまった技法」の一つに考えられています、つまり、あまり使われません。

たった31文字の中で、序詞を入れると、文字数がかなり制約されてしまい、これが現代の風潮と合わないという説もあります。たしかに、序詞は、優雅な言葉遊び的な面があります。

まずは基本を

序詞を使うときは、その歌そのものが、歌として、きちんとしたものなのか、まずチェックをしてみてください。そして本当にその序詞が必要かどうかを考えた上で、効果的に使ってください。

「序詞」の使われている現代短歌を参考に

現代の歌人の中に、和歌の技法を取り入れている人は少ないですが、全くいないわけではありません。「新古典主義」と称されるタイプの歌人、例えば水原紫苑さん、紀野恵さん、もしくは大塚寅彦さんの作品を参考にされるといいかと思います。

参考書籍: 新書館『現代短歌の鑑賞101 』 (小高賢・著)

おわりに

「序詞」は、高度で優雅な言葉遊びとも言えます。使いこなすのは、簡単ではないはずです。歌を作るときは、まず、意味や文法やリズムといった基礎をしっかりさせるよう気を配られるといいかと思います。

「序詞」は知識の一つとして、最初は、和歌・短歌の鑑賞のために活用してみてください。

(photo by 足成)

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