コールセンターは特殊な業界です。筆者は、クライアントがいるアウトソーシングのコールセンターで、現場責任者として3年ほど勤務していました。
最初はわからないことが多いのですが、当たり前に使われている言葉がたくさんあり、会話や指示についていけないことがあります。なるべく的確な仕事をして自分の評価を上げるためにも、業界用語は早くから知っておいて損はありませんでした。
今回は、コールセンター業界の業界用語をご紹介したいと思います。
コールセンターの用語解説
1:SV(エスブイ)
- 意味:スーパーバイザー(管理者)
- 使い方:オペレーター「SVに報告しなきゃ」
SVというのは立場の名称ですが、スーパーバイザーというのは英語で直訳すると管理者を意味し、そのまま上席の役職として使われています。顧客に対してSVという言い方はしません。必ず「上席」「上司」などと呼び方を変えるため、コールセンター内特有の呼び方です。
2:スクリプト(トークスクリプト)
- 意味:電話対応での決まり文句
- 使い方:上席「トークスクリプト通りに対応しましょう」
スクリプトは英語で「台本」という意味。クライアント指定のものがほとんどで、オープニングトーク(会社名や挨拶)などは、顧客対応品質を統一するために文字通り全員が決められたスクリプト通りに対応し、話を進めていきます。
品質管理として顧客対応音声を録音し、上席がチェックしたりクライアントに提出することもあるので、トークスクリプトは顧客対応をやりやすくする以外にも個人の対応評価の対象となります。
3:OB(オービー)
- 意味:電話を顧客にかける事
- 使い方:上席が「〇〇さん、今すぐ顧客にOBして!」
OBは、Out Bound(アウトバウンド)の略で、別の呼び方として「架電」とも言います。顧客から「かけ直して」などと要望があった際に使用します。逆に、顧客からの問い合わせは「入電」「インバウンド」と呼びます。
誤案内をしてしまった際などは迅速なお詫びと訂正対応が求められますが、そのようにかけ直すことも含めてOBと総称します。
4:CPH(シーピーエイチ)
- 意味:1人のオペレーターが1時間に受信したコール数
- 使い方:上席が「今日の目標は、みんなCPH10でいきましょう」
CPHはコールパーアワーの略で、その算出方法は各企業によって異なります。しかし、個人の成績として数字で表れるため、評価の対象やクライアントへの報告に使われる重要な数値です。
5:ACW
- 意味:顧客対応の記録を残したりする後処理
- 使い方:上席が「〇〇さん、ACWちょっと長いよ」
ACWは、After Call Work(後処理)の略です。その間は電話対応(受電)することができないため、コールセンターとして優秀な人材はACWの短いオペレーターとなります。
サボろうとするオペレーターはこの時間が長くなる傾向にあり、オペレーター同士のいざこざの原因になったりもするため、管理者は後処理を速くするよう促したり、目を光らせています。
6:待ち呼
- 意味:電話回線が混み合い対応できるオペレータがおらず、電話をかけた顧客が待っている状態
- 使い方:上席が「待ち呼3!ACWは後回しにして受電して!」
電話回線がすべて埋まると、顧客が電話問い合わせをした際、自動音声ガイダンスに「申し訳ございませんが、ただいま回線が大変混み合っております。このままお待ちいただくか、しばらく経ってから…」というアナウンスが流れます。
企業によりますが、待ち呼の状況がモニターに映し出され、オペレーターに今何人の顧客が待っているかがわかるようになっていることもあります。
7:放棄呼
- 意味:待ち呼として待っていた顧客が、オペレーター対応前に電話を切ってしまったこと
- 使い方:上席が「この1時間で放棄呼が15も出てしまったよ」
放棄呼は、せっかく待ってもらっていた顧客を結局対応できずに切られてしまったという大変不名誉なことです。放棄呼が大量に出てしまうと、クライアントとの契約を達成できない可能性もあり、事業としての収支に関わる程に大きく左右する数字です。
顧客が電話を切ってしまうことを「落ちる」と表現する場合もあります。その場合は、「また落とした。これで放棄呼が15だ」と使います。管理者は、待ち呼よりむしろ放棄呼を気にします。「放棄呼」という言葉を耳にしたら、待ち呼がいる良くない状況と思って受電に専念すると、CPHも上がるので個人の評価も必然的に上がります。
8:エスカレーション(エスカ)
- 意味:オペレーターで対応しきれない問題が発生した際に助けを求める手段
- 使い方:オペレーター「エスカお願いします。上席対応交代希望です」
エスカレーションは英語本来の意味とはちょっと違います。
顧客の質問に対して自分の判断で答えられなかったり、ものすごいクレームで上席対応交代を希望されていたり、以前対応したオペレーターへの指名交代を希望されていたりする場合は、エスカレーションをして上席の判断を仰ぎます。
9:モニタリング
- 意味:オペレーターの顧客対応を、リアルタイムで別回線で聞くこと
- 使い方:オペレーター「クレーム顧客でもめそうなので、モニタリングしてもらえますか?」
オペレーター側からの要望でモニタリングをすることもありますが、単純に品質チェックのためにオペレーターには言わずにモニタリングをすることもあります。また、ベテランのモニタリングを新人がして、実際の業務の流れを覚えたりすることもあります。
10:ロープレ
- 意味:新人研修などで、オペレーター役と顧客役になりスクリプト通りに実務と同様に対応練習すること
- 使い方:上席が「〇〇さんと□□さんで3コールずつロープレやってください」
ロープレは、ロール(=役割)プレイング(=演じる)の略で、新人研修や品質向上のために実際の対応を想定して、会話形式でおこなうトレーニング方法です。ロープレ中はどれだけ失敗しても練習なので問題ありません。むしろここでの失敗を実務で活かせるようにトレーニングをします。
おわりに
コールセンターは、顧客対応前に研修がしっかりあることが殆どだと思うので、独特の雰囲気と専門用語に早く慣れれば、あとはCPHを上げることだけを目標に、日々仕事をするのみです。
ただし、業務内容によっては入電の殆どがクレームを受ける場合もあるため、よっぽど精神力が強くないと長続きしない業務だと思います。
そのためか、アルバイトでも時給が比較的高いと思うので、心身共に健康でいられるように、プライベートを充実させることが重要だと思います。
(image by 足成)