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超高齢老人の昔語り 高校古文『大鏡』読解のポイント

古代の上等な鏡のように、過去の史実を明らかに映し出す書物 - これがこの作品を『大鏡』と呼ぶ理由のようです。

実在したならばギネス級の高齢だった老人たちが語る歴史とはどんなものなのでしょうか。

作者について

作者は未詳

作者は誰なのかはっきりしていません。候補者は何人かいるのですが確証を得られないので現段階で作者は未詳です。

推定される作者として、藤原道長について詳しく伝聞できる立場にあり、歴史や仏教に関心が高い男性貴族であることは間違いなさそうです。

おおまかな内容

歴史物語

史実には、一応忠実ではあるものの話をおもしろくするための虚構が含まれているものもあります。このような作品を歴史物語と呼びます。

超高齢老人による昔語り

作者が雲林院の菩提講に参会したときに、非常に年をとった老人たちが来ていました。その老人というのは、メインの語り手で190歳大宅世継(おおやけのよつぎ)、180歳夏山繁樹(なつやまのしげき)とその妻です。ここに30歳くらいの若侍が加わり、菩提講の講師の出を待つ間に昔語りが始まります。

菩提講(ぼだいこう)とは極楽往生を求める人のために法華経を講説する法会(ほうえ)のことです。こうした法会には今で言うと人気ミュージシャンのライブくらい人が集まったそうです。説法ライブとでも思っておいてください。

語りたかったのは藤原道長の栄華

「まめやかに世継が申さむと思ふ事は ―」

世継は「私が本当にお話したいのは、現在の入道殿下(道長公)の栄華についてです。そのためにはどうしても多くの帝・后、大臣・公卿について話さなくてはならないのです。」と宣言します。

道長の栄華のすばらしさとその権力の由来を語るのが『大鏡』著作の目的というわけです。

この世をば わが世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも なしと思へば

「世界はこの手の中にあるよね」といった内容のこの和歌は、威子立后を祝う自宅での宴会時に詠まれました。

歴史の教科書でも見かけるこの和歌ですが、道長本人も駄作と思ったのか自身の日記『御堂関白記』には記載されていません。宴会に同席した藤原実資(さねすけ)の日記『小右記』に書き残されたものが今に伝わっているのです。

この数年後、万寿2年(1025年)を現在として世継ぎの語りが始まります。

構成

1.序 

話し手の紹介・著作の目的

2.帝王本紀

文徳天皇から後一条天皇に至る14代・176年間の歴史

天皇の履歴を簡単に記述したものですが、花山天皇の出家の事情についてはやや詳しく述べてあります。

3.大臣列伝

冬嗣から道長に至る20人の大臣の伝記と、関係する人々の逸話

菅原道真の大宰府左遷の事情や、兼通・兼家兄弟、道長・伊周(これちか)の権力争いなどについて詳しく述べられています。

4.藤原氏物語

鎌足から道長の子・頼通までの藤原氏繁栄の歴史

5.昔物語

和歌や神事・仏事に関する説話的内容

文体

紀伝体

歴史叙述には、年月の順を追って事実を記す編年体と、人物の伝記を中心に記される紀伝体がありますが、『大鏡』は紀伝体で書かれた作品です。

和漢混交文

仮名文字による歴史物語です。基本的には和文調ですが、漢文的な言いまわしも多く、男性的な文体と言えます。このように和文と漢文をミックスしたような文体を和漢混交文と呼びます。『大鏡』は鎌倉期以降の和漢混交文の源流とも言える作品です。

読解のポイント

対話形式

メインの語り手は大宅世継で、『大鏡』の大部分は世継によって語られます。ここに夏山繁樹と若侍が加わることで生まれた対話を、聴衆の中にまじっていた作者が聞き取って書き記したという体裁をとっています。

これら登場人物は架空の設定で、できるだけ客観的に歴史を語るために対話形式を採用したものと考えられます。

終助詞・間投助詞に注意

話し手の感動表現を表わすために「な・かしな・ぞかし・はや・はとよ」などの終助詞や間投助詞が多く使われています。相手を説得したり、共感を求めるためのものです。作者の主張を読み取るためには重要ですので、見落とさないよう注意しましょう。

おわりに

花山天皇の出家の話には、あの陰陽師・安倍晴明も登場します。式神を使って天皇の出家を報告させようとするなど興味深い逸話も含まれています。

あくまで「物語」ですので、すべてを史実ととらえることはできませんが、道長をはじめ魅力的に書かれた人物が登場しますので、平安時代の歴史に興味をお持ちの方にはお勧めの作品です。

(image by amanaimages)

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