古文の助詞は全部で50種類ほどもあります。しかし、中学では10種類も理解すれば、試験対策としては十分です。その必要最小限の助詞を紹介しましょう。
係助詞「ぞ」「なむ」「や」「か」「こそ」
中学で最も試験に出る助詞は、もちろん係り結びを生じさせる係助詞です。これだけは何がなんでも覚えてください。
「ぞ」
- 意味:強意
- 例文:花ぞ散りける。(『古今和歌集』)
- 解釈:桜が散った。
- 「ける」は連体形。
「なむ」
- 意味:強意
- 例文:もと光る竹なむ一筋ありける。(『竹取物語』)
- 解釈:根元が光る竹が一本あった。
- 「ける」は連体形。
「や」
- 意味:疑問・反語
- 例文:春立つ今日の風やとくらむ(『古今和歌集』)
- 解釈:(凍っていたのを)立春の今日の風が解かしているのだろうか
- 「らむ」は連体形。疑問か反語かは前後の文脈で判断。
「か」
- 意味:疑問・反語
- 例文:何事かありけん(『徒然草』)
- 解釈:何事かあったのだろうか
- 「けん」は連体形。疑問か反語かは前後の文脈で判断。
「こそ」
- 意味:強意
- 例文:神へ参るこそ本意なれ(『徒然草』)
- 解釈:神にお参りすることこそ本来の目的だ
- 「なれ」は已然形。
接続助詞「ば」
係助詞に次いでよく出題されるのが「ば」です。ふつう、文法の知識より、読解力を問われます。
- 意味1:未然形+「ば」の場合。仮定条件。もし~たら
- 例文:渡さば得ん。(『古本説話集』)
解釈:渡すなら、受け取ろう。
意味2:已然形+「ば」の場合。確定条件。A、理由。~ので。B、偶然。~と。A、Bの区別は前後の文脈で判断すること。
例文A:石清水を拝まざりければ、心うくおぼえて(『徒然草』)
解釈:石清水を拝んでいなかったので、残念に思って
例文B:見渡せば花ももみぢもなかりけり(『新古今和歌集』)
解釈:見渡すと、桜も紅葉もないのだ
格助詞「の」
「の」は現代の「の」と余り意味が違わないので、いきなり出題されることがあります。いくつかの「の」のうち、意味の違うものを一つ選べ、という形式が多いです。現代の「の」が分かっていれば、あわてることはありません。
- 意味1:連体修飾語(名詞を修飾する語)をつくる。
- 例文:月のころはさらなり(『枕草子』)
解釈:月のころは言うまでもない
意味2:主語をつくる。
例文:夕日のさして(『枕草子』)
解釈:夕日がさして
意味3:体言の代理になる。
例文:前の守も今のも諸共におりて(『土佐日記』)
解釈:前の国司も今の(国司)も一緒に(庭に)おりて
終助詞「そ」
- 意味:禁止
- 例文:な起こしたてまつりそ(『宇治拾遺物語』)
- 解釈:お起こし申し上げるな
- 「な~そ」という形で「禁止」を表すことが多いです。「な」は副詞。
終助詞「ばや」
- 意味:希望
- 例文:助けたてまつらばや。(『平家物語』)
- 解釈:お助け申し上げたい。
接続助詞「で」
- 意味:打ち消し
- 例文:君ならでたれにか見せむ梅の花(『古今和歌集』)
- 解釈:この梅の花はあなたでなくて、誰に見せましょうか、いや見せません
- 打ち消しなので、見落とすと文意が反対になってしまいます。要注意です。
おわりに
いかがでしたか。ここに紹介した助詞を覚えただけで、読解力は上がったと思いますよ。もちろんこれ以外の助詞も余裕があったら、どんどん覚えてください。