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    高校・古文法「和歌の修辞法を学ぶ」

    「和歌は苦手」という高校生は多いと思いますが、大学入試センター試験の古文でも和歌に関する出題率は高いと言えます。高校古文を勉強する上で、和歌の学習は必須のものとなってきています。

    五・七・五・七・七のわずか三十一音の中に、より多くの内容を詰め込もうとして、歌人たちはいろいろな工夫をしました。それが技法として定着したものが和歌の修辞法と呼ばれるものです。

    この修辞法を理解しないで和歌を訳そうとすると、なんだかわけが分からない文になってしまします。

    4つの代表的な修辞法である枕詞(まくらことば)・序詞(じょことば)・掛詞(かけことば)・縁語(えんご)を理解することで、和歌に対する苦手意識を克服しましょう。

    枕詞のポイント

    枕詞とは

    ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
    紀友則 『古今集』

    訳:陽の光がのどかな春の日だというのに、どうして桜の花はあわただしく散っているのだろう

    口語訳を見てわかるように、初句の「ひさかたの」は口語訳する必要がない言葉なのです。

    ひさかたの」は第二句の「」を導き出すために使われています。枕詞とは一定の語を導き出す五音の言葉で、どの歌人も同じ使い方をします。規則性があるものなので、枕詞とその導き出される言葉はセットで暗記しましょう。

    五音である理由は初句と第三句に入れやすいからだと思われます。通常五音ですが、「しらぬひ」のようにまれに四音のものも存在します。しかし、あくまで例外的なものなので、五音以外のものは覚える必要はないと思います。

    導き出される言葉の規則性

    前述したように「ひさかたの」は「光」を導き出す枕詞です。「光」以外にも「天」「空」「日」「月」「雲」「雨」などを導き出します。これらの言葉にはなにか関連性があると思いませんか?

    「ひさかたの」は漢字で書くと「久方の」になります。もともとは「はるかかなたの」という意味で使われていたのではないかという説もあります。

    はるかかなたの天空からからやって来る「光」や「雨」、はるかかなたにある「日」や「月」など天空や天体に関連した言葉が「ひさかたの」によって導き出される言葉です。

    関連性で覚える

    以下に代表的な枕詞を挙げます。

    • 「あしひきの」:山に関連する言葉を導き出します。「山」「峰」など
    • 「ぬばたまの(うばたまの)」:黒いものや闇に関連する言葉を導き出します。「黒」「夜」「闇」「月」「夢」など
    • 「ちはやぶる」:神に関連する言葉を導き出します。「神」「神社の名前」など

    他にもたくさん有りますが、辞書を使ってどんな言葉を導き出すのか調べ、関連性でまとめると暗記しやすくなると思います。

    序詞のポイント

    序詞とは

    あしひきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む
    柿本人麻呂 『拾遺集』

    訳:独り寝するという山鳥の垂れ下がった尾のように、長い長い夜をひとりで寝ることになるのだろうか

    「あしひきの」は「山」の枕詞です。

    初句から第三句までが「ながながし」を導き出す序詞です。ここではその「長さ」がどれほど長いのかの比喩になっています。

    ある言葉を導き出すという点で、枕詞と序詞は似ていますが、

    • 1.枕詞が五音なのに対し序詞は音数が一定ではない(通常七音以上)
    • 2.枕詞は規則性があるが、序詞は独創的で作者が自由に創作する
    • 3.枕詞は口語訳しないが、序詞は口語訳する

    という点で異なります。

    序詞の見分け方

    序詞は作者である歌人が自由に創作する個性的な修辞法なので、枕詞のように暗記で対応することはできません。枕詞と比べると複雑な修辞法と言ってよいでしょう。

    序詞の見分け方としては、前半と後半で一見したところ関連性のない内容になっていないか確認してみてください。

    例に挙げた和歌を見てみると、前半は山鳥の描写なのに対して後半は独り寝の寂しさという心理描写になっています。このように内容的に関係のなさそうな情景描写+心理描写で出来上がっている場合は序詞が含まれている可能性が高いと言えます。

    当然のことながら、和歌は歌人の感動が中心となりますので、情景描写の方が序詞ということになります。

    掛詞のポイント

    掛詞とは

    大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみもみず 天の橋立
    小式部内侍 『金葉集』

    訳:大江山を越えて、生野を通って行く道は遠いので(丹後の)天の橋立の地を踏んでみたこともないですし、(母からの)手紙も見ていません

    いく野」が地名の「生野」と「行く野」、「ふみ」が「踏み」と「文=手紙」のふたつの意味を持ちます。

    このように掛詞とは、同音異義語を利用して、ひとつの言葉にふたつ以上の意味を持たせて、内容を豊かにする修辞法です。上品なダジャレとでも思っておいてください。

    掛詞の例

    • 「あく」:「明く=明ける」「飽く=満足する」
    • 「かる」:「枯る=枯れる」「離(か)る=離れる」「借る=借りる」
    • 「ながめ」:「長雨」「眺め=もの思いにふけりながらぼんやりと見ること」
    • 「まつ」:「松」「待つ」
    • 「あらし」:「嵐」「あらじ=動詞『あり』の未然形+打消推量の助動詞『じ』」

    「嵐」と「あらじ」のように清音と濁音の組み合わせも存在します。特に平仮名で表記されている場合は注意が必要です。

    縁語のポイント

    縁語とは

    来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼く藻塩の 身もこがれつつ
    藤原定家 『新勅撰集』

    訳:松帆の浦の松ではないけれども、来ない人を待つ私は、松帆の浦の夕なぎの頃に焼く藻塩のようにずっと恋焦がれています

    まつ」は「松帆の浦」の「」と「待つ」の掛詞、「まつほの」から「藻塩の」までが「こがれ」を導き出す序詞です。

    藻塩」とは海藻から採る塩で、海水をかけて塩気を含ませた海藻を焼いて作ります。「焼く」や「焦がる」は「藻塩」を作る上で連想される言葉と言えるでしょう。

    このように、ひとつの言葉から連想ゲームのように導き出される言葉のグループを縁語と言います。「焼く」と「焦がる」は「藻塩」の縁語です。

    縁語の例

    • 「糸」:「綻ぶ(ほころぶ)」「乱る」「縒る(よる)」
    • 「露」:「消ゆ」「置く」「結ぶ」「葉」「野」
    • 「弓」:「張る」「射る」「引く」「返る」

    縁語を探すときには掛詞にも注意が必要です。

    おわりに

    最近は「百人一首」がちょっとしたブームになっているようです。筆者が例に挙げた和歌もすべて百人一首からのものです。

    百人一首に選ばれている和歌はどれも親しみやすいものばかりですが、実はこのように技巧を凝らした和歌が多く選ばれています。

    ブームに乗って百人一首をじっくりと勉強してみれば、和歌の修辞法についての理解も深まるのではないでしょうか。

    (image by amanaimages)

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