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    都会には存在しない「けもの業」ってどんな仕事?

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    SmartNewsのNPO支援プログラム「SmartNews ATLAS Program」との連動記事です。

    こんにちは。長島です。

    最近、こんなニュースが話題に上がっていたのですが、みなさん知ってますか??

    twitter上でも「写真のインパクトやばい…。」「色々ツッコミたくなる」などのコメントで盛り上がっていました。さらには、こんなフリー素材も登場してて、

    画像のインパクトが強烈すぎてよくわからなくなってますが、実はこれ、サルを追い払うためにやってるんです(ネタじゃないんです)。ただ、コレ見ただけだと「いやいや、サルの追い払いって何よ?」「何のためにするの??」って思う方も多いんじゃないでしょうか。ということで、実際に体験してきました。

    今回は、GPSなど最先端のテクノロジーを活用して、サルなどの追い払いをしている特定非営利活動法人「甲斐けもの社中」に、獣害対策を体験させていただきつつ、その考え方について教えてもらいました。

    事務所がある山梨県南アルプス市に行ってきた!

    特定非営利活動法人「甲斐けもの社中」専務理事の山本圭介さんです。

    こちらがオフィスで飼っている甲斐犬。アニメ「流れ星 銀」みたいで雰囲気があります。

    サルの追い払いってなに?獣害問題とは?

    早速、山本さん(画像 右)に話を聞いてみた!

    長島:
    「最近、ネットニュースで話題になってましたが、そもそもなんでサルを追い払うんですか?」

    山本さん:
    「サルだけじゃなく、鹿、イノシシなど、野生の動物が住民の畑や田んぼを荒らすんです。『獣害問題』というのですが、それを防ぐために追い払ってるんです」

    獣害問題とは、高齢化などによる人口の減少から畑が無防備になり、野生動物に荒らされ、農作物が被害に遭うこと。農林水産省の発表によると、被害総額は約200億円にまで登るといわれている。

    山本さん:
    「サルは1群れ15頭〜70頭、多いときには100頭レベルで行動します。山の中だと1日中餌を探し回らなければいけないのですが、畑だと30分もあれば群れの一日分の餌が賄えるんです」

    長島:
    「畑に行った方が圧倒的に効率的なんですね」

    獣害対策とテクノロジー

    長島:
    「対策ってどんなことやってるんですか?」

    山本さん:
    「対策をするには、4つのステップがあります。まず、相手(野生動物)の状況の把握、次に動きの把握、そしてそれらの結果を見てどういう風に追い払うかを考えアクションします。最後にアクションした後の検証ですね」

    山本さん:
    「ニホンザルについては単に個体数を減らすことが正解ではないため、サルの生態と地域の意向の両方から共存の方策を考えます」

    長島:
    「でも、山を彷徨う野生動物の状況や動きを把握するって相当な労力じゃないですか?」

    山本さん:
    「そこでテクノロジーを活用するんです。スマートセンサーや赤外線カメラなどを使います。実際、屋根の上から音がするという報告を受けて調査したら、アライグマが映っていた…ということもありました。そういった意味ではドローンなども使って良いと思ってます。獣害対策で一番大事なことは相手を見ること。相手を見ないと逆に非効率になってしまうんです」

    長島:
    「なるほど、まさに状況の把握ですね。動きの把握とは?」

    山本さん:
    「サルであれば、メスにGPSを付けて行動管理します。どれだけ集落に依存しているかもわかりますね。サルは母系社会なんで、メスを管理すれば群れを把握できるんですよ」

    長島:
    「母系社会っておもしろいですね」

    山本さん:
    「長島さんのところも奥さん、強いでしょ?ある意味、人間と一緒なんですよ」

    長島:
    「納得です(笑)。ただ、状況や行動を把握してそこからどうするんですか?」

    山本さん:
    「サルの行動結果にも寄るのですが、集落のないエリアに戻ることができる群れと判断すれば、我々が追い払って、サルの活動領域を山奥などに押し寄せます」

    長島:
    「集落から遠ざけることで畑の被害をなくすわけですね」

    山本さん:
    「あとは、サルの動きを一日一回農家さんへメールで送信して、農家さんたちが追い払い用の花火で対策したりとかですね。それは実際効果も出てます」

    サルの追い払いを体験してみた

    今回は「サルの活動領域を集落ないエリアへ追い払う」という体験をお手伝いさせていただきました。今後は興味がある方を募集して理解を深めるという目的でイベント化も計画しているようです。

    体験の流れはこのような感じです。

    • 事前確認(地形、サルの行動、メンバーの役割など)
    • 予行練習(実際現場に行ってみて行動を確認)
    • 追い払い
    • 振り返り

    サルの行動経路を読む

    Googleマップの航空写真で地形を確認します。

    そして、予めGPSを取り付けたサルの直近の行動記録を確認します。

    長島:
    「すごい!サルの行動が見えすぎる!!」

    山本さん:
    「この写真では、サルが集中して使ってるエリアがあることがわかります。追い払ってもその中でしか逃げ回らないのでは?ということがわかってきましたね」

    予行練習

    今回のエリアはこちら。南アルプスのきれいな山々に囲まれてすごい気持ち良いです。

    山本さん:
    「事前に市役所、近所の住民の許可を得ています。ただ、万が一サルが急に飛び出してくるかもしれないことも想定して、警備スタッフも配備してます」

    と、早速、サルが農作物を荒らした形跡が!!!

    リアルに被害を受けてる……

    早速、練習すべくメンバーと動き方の確認をします。

    実際、歩いてみながら地形を確認。

    山本さんは司令室でサルの行動をモニタリング。

    GPSでサルの居場所をリアルタイムで取得します。

    司令室からこのような画像が送られてきます。

    メンバーはトランシーバーなどを駆使しながら連携を取ります。

    作戦実行

    いざ出陣だ〜〜〜!!!!!

    サルのあしあと発見!確実にこの付近にいるのがわかります!!

    もはや、道ではない場所を進んでいきました。

    GSPを駆使しつつ、サルを追い払っていきました。サルがめちゃくちゃ俊敏なので写真は一枚も撮れなかったのですが、サルは見ました(本当です!)

    そして、後日行った検証によると、今回の追い払いでしばらくはこのエリアにサルは出てこなかったようですが、結局は戻ってきたとのこと。つまり、サルはここが住まいだと認識しているということで、そうなるとこれ以上の追い払いは難しいようです。

    獣害対策のきっかけは「ほうとうの具」

    山本さんにこの仕事をやり始めたきっかけや想いなどを聞いてみました。

    長島:
    「そもそも、なんでこの仕事やろうと思ったんですか?」

    山本さん:
    「最初は、獣害対策よりも野生動物に興味があったんですよね。狼が好きだったので海外で狼を学びたいと思ってました。そんな中、とあるきっかけで山梨県の食文化についてを学びに行ったとき、おばちゃんにほうとうの具に何を入れるか聞いたんです」

    長島:
    「ほうとうって山梨の郷土料理の?」

    山本さん:
    「そうです。そしたらおばちゃんは『ほうとうに入れるもんなんてないよ、大根はサルにかじられた、カボチャはイノシシに割られた、野生動物が全部持って行ったんだよ』って。そのときに気付かされたんです。野生動物の保護保全をしたいのは自分のエゴだったなと。目の前の保全が全然できていないのに何かを守るって説得力がないなと思ったんです。まずは日本の野生動物の問題(獣害)をやろうと決めたんです」

    長島:
    「すごいきっかけですね。ほうとうで人生が変わったって人、はじめて会いました」

    町医者と患者の関係性。獣害対策はひとりでは解決できない

    長島:
    「この仕事で一番のやりがいってなんですか?」

    山本さん:
    「やっぱり住民に感謝されることですね。ただ、ひとつ間違っちゃいけないことは、住民の協力なくしては対策なんてできないんです」

    長島:
    「というと??」

    山本さん:
    「ぼくは、いわゆる町医者みたいなものだと思ってます。例えば、長島さんが風邪をひきました。ぼくが『安静が必要ですね』って言ったけど、その日、友達に飲みに誘われたらどうしますか?」

    長島:
    「メンバーによっては行くかもしれないですね」

    山本さん:
    「飲み会の会場にプールがあったら?」

    長島:
    「流れ次第では飛び込むかもしれないですね」

    山本さん:
    「でも、プールに飛び込んだら風邪は悪化しますよね。要は、問診してからどうするか。そこからは長島さんや住民の方次第なんです。お医者さんがプールの前にずっと立ってるわけにはいかないじゃないですか」

    長島:
    「仰るとおりです(恐縮)」

    山本さん:
    「野生動物の状況や行動をレポートした後に住民から『あんたたちがやるんじゃないの?』と言われたら、すごい寂しい気持ちになります。私や行政だけでは何もできない。住民のみなさんの協力が不可欠なんです」

    大事なことは「みんなで支え合うこと」

    獣害対策はソーシャルワークそのものだと山本さんは言います。

    山本さん:
    「地域の方の困っていることに耳を傾けて、何が一番適しているかを知りながら提供していく仕組みづくりが大事です。ひとりで全部できるものではないので、みんなを支え合えるようにしたいですね」

    最後に

    仮に山梨県の人口がゼロになったら、野生動物は神奈川や東京に流れこんでくるかもしれません。もっともっと人口が減ったら被害も広がります。そう思えば、ぼくらにとっても身近な問題なんだと感じました。

    今後、甲斐けもの社中では、南アルプス市の現地体験ツアーを企画して、獣害対策と触れ合えるイベントとかもやるみたいなので、Facebook公式サイトもチェックしてみてください!

    (illustrated by ぱり)
    (image by 甲斐けもの社中)
    (image by 長島)

    このライフレシピを書いた人
    nanapi編集部